最近画期的な乳癌の超音波検査装置が世界で初めて開発されました。
 従来の乳癌の超音波検査では乳腺組織の切断画像を白黒で表現し、腫瘍の有無について観察していました。これは腫瘍が白黒の濃淡で表現されるもので、小さな腫瘍は描出が難しく比較的大きくて病変部がどの位置にあるのかわかっても、その悪性度(癌なのか良性腫瘍なのか)を診断するにはかなりの知識と経験が必要でした。
 腫瘍が癌なのか良性なのか、乳癌研究者が手術で摘出した多くの乳腺腫瘍の標本を調べた結果、良性のものは柔らかく、悪性のものほど硬いことが明らかになっています。従って超音波により得られた情報から腫瘍組織が柔らかいのか硬いのか判断できれば癌かどうか推定出来るわけですので、乳癌診断に画期的な変化をもたらすわけです。
 超音波を使って硬さを表示する技術はこれまでもあったのですが、コンピューターでの長時間に及ぶ計算が必要なため巨大な設備が必要で実際の診療で使えるようなものはありませんでした。今回紹介するのは「超音波組織弾性画像診断装置」です。これは乳癌組織の硬さをリアルタイムに描出するコンパクトな装置で世界で初めて商品化されましたものです。この装置を用いると、柔らかい部分は赤く、硬い部分は青く超音波画像に硬さの違いがリアルタイムに色分けして表現されます。硬さの違いを画像化することにより従来の超音波装置では周囲組織とコントラストが同じため見えなかったような小さな腫瘍でも発見することが可能で、その質的判断もできるようになりました。
 欧米ではマンモグラフィーを使った乳癌検診が常識です。それは、マンモグラフィーは体の外側からの視診や触診では触れない微細な乳癌が画像として描出されるためです。日本でも乳癌の早期発見にはマンモグラフィーが中心であることはかわりなく、これについてこれまで数回にわたり解説してきましたが、マンモグラフィーが乳癌発見に万能ではないことも最近解ってきました。それは、マンモグラフィーは比較的高齢の萎縮傾向にある乳腺の癌の発見は得意で微少な癌がずいぶん見つかっています。しかし、若い方のみずみずしい乳腺の場合は脂肪や水分が多いためにマンモグラフィーで腫瘍とのコントラストが得にくく、非常に小さな乳癌だと写りにくいことのあることも解ってきました。また乳房が比較的小さな場合や出産直後の場合にはマンモグラフィーで乳房を十分に圧迫が出来ないために乳腺全体をきちんとカバーした画像が得られないことも少なからずあります。
 このようなことから乳癌検診ではマンモグラーフィー検査に超音波を併用して乳腺の隅々までしっかりスキャンする必要のあることが最近の定説になっており、当院でも最初からこの方法を採用して乳腺ドックを行ってきました。
 「超音波組織弾性画像診断装置」を用いると従来の超音波検査で発見できなかった微細な乳癌を描出する事が可能になりました。怪しい所見が見られた場合、この装置には精密な穿刺装置が併設されていますので、超音波でその部分を正確に狙いを定めて細い穿刺針で穿刺して直接細胞検査を行うことも可能です。
 比較的初期の乳癌は疼痛等の自覚症状は全くありませんし、進行してある程度の腫瘤を形成して来ないと触診してもまず判りません。最近の研究では視診・触診での乳癌検診を行っても乳癌を早期発見し死亡率を減少させるのに役に立たないことが明らかになりました。マンモグラフィーでは視診や触診では解らない微細な乳癌が画像として描出されるため、マンモグラフィーを使った乳癌検診は常識ですが、乳癌の超早期発見には「超音波組織弾性画像診断装置」を用いた精密な超音波検査の併用を行うことをお勧めいたします。